「出産後、なかなか体重が戻らない…」
「35歳を過ぎてから、特に痩せにくくなった気がする…」
もしあなたが今、そう感じているなら、それは決して珍しいことではありません。厚生労働省の調査では、35歳以上の女性の約7割が、産後1年が経過しても妊娠前の体重に戻っていないというデータもあります。
産後の体は、想像以上にデリケートで複雑な変化を経験しています。特に30代半ばからの産後ダイエットは、20代の頃とは異なるアプローチが必要です。
この記事では、35歳産後に痩せにくいくなる具体的な理由を科学的根拠に基づいて分かりやすく解説し、あなたの心と体に寄り添った健康的に痩せるためのヒントをお届けします。
35歳産後「痩せにくい」と感じる、その理由を徹底解説

産後、特に35歳産後を過ぎてから体重が落ちにくくなるのは、複数の要因が複雑に絡み合っているからです。主な原因を見ていきましょう。
1. ホルモンバランスの大きな変化
妊娠と出産は、女性の体に劇的なホルモンの変化をもたらします。
プロゲステロンの影響
妊娠中に多量に分泌される女性ホルモン「プロゲステロン」は、妊娠を維持するために脂肪や水分を蓄えやすくする働きがあります。産後もこの影響が残りやすく、太りやすい体質になることがあります。これは、妊娠中の体を守るための自然な防御反応とも言えますが、35歳産後の痩せにくい体質に繋がることがあります。
エストロゲンの低下
30代半ばからは、女性ホルモン「エストロゲン」の分泌が緩やかに低下し始めます。エストロゲンは脂肪の蓄積を抑え、筋肉の維持にも関わるため、その減少は脂肪がつきやすく、筋肉がつきにくい体質に繋がります。脂肪燃焼の効率も低下しがちであるため、特に35歳産後の女性は、妊娠前と同じ生活を送っていても体重が減りにくく感じることが多くなります。
プロラクチンの影響
授乳中には「プロラクチン」というホルモンが分泌され、これが食欲を増進させることがあります。「授乳しているからたくさん食べても大丈夫」という意識も相まって、必要以上にカロリーを摂取してしまう場合があります。このプロラクチンによる食欲増進は、特に35歳産後の女性が痩せにくいと感じる一因となり得ます。
2. 基礎代謝の低下
年齢とともに、私たちの体は変化していきます。
加齢による自然な低下
30代に入ると、性別に関わらず基礎代謝(生命活動を維持するために最低限必要なエネルギー量)は緩やかに低下し始めます。特に35歳産後を過ぎるとその傾向が顕著になります。
日本人の基礎代謝基準値を見ると、女性の場合、30代後半から40代にかけて緩やかに低下する傾向がデータとして示されています。これは、意識して運動しない限り、筋肉量が自然と減少していくためです。20代の頃と同じ食事量や運動量では、消費カロリーが不足し、痩せにくい体質へと変わっていきます。
筋肉量の減少
妊娠中の運動不足や、産後の育児による疲労で、意識しないうちに筋肉量が減少してしまうことがあります。厚生労働省が実施する国民健康・栄養調査でも、多くの年代で運動習慣がないと回答する割合が高く、特に育児中の女性は運動時間を確保しづらい実態が浮き彫りになっています。
例えば、フィットネスクラブのルネサンスやコナミスポーツクラブなどでも、産後向けのプログラムを提供していますが、それでも通う時間を見つけるのは容易ではありません。
筋肉は脂肪よりも多くのエネルギーを消費するため、筋肉量が減ると基礎代謝はさらに低下し、太りやすい体質に傾いてしまい、35歳産後の痩せにくい体質をさらに加速させる主要な要因となるのです。そのため、日常の中でいかに筋肉を維持・増加させるかが、健康的に痩せるための重要なカギとなります。
3. 骨盤の歪みと体型の崩れ
出産は、骨盤に大きな影響を与えます。
骨盤の開きと歪み
出産時、赤ちゃんが通りやすくするために骨盤は大きく開きます。しかし、産後にこの骨盤が正しい位置に戻らず歪んだままになると、体のバランスが崩れやすくなります。日本理学療法士協会によると、骨盤の歪みは腰痛や肩こり、股関節痛といった不調だけでなく、内臓下垂によるぽっこりお腹、下半身のむくみ、便秘など、多岐にわたる身体的問題を引き起こすことが指摘されています。
これは、骨盤が体の土台であるため、そのバランスが崩れると全身の血流やリンパの流れが悪くなり、代謝機能の低下を招くためです。実際に、全国各地にある産後骨盤ケア専門の整体院では、骨盤矯正を通じてこれらの不調が改善されたという事例が多く報告されています。
例えば、東京や大阪の「トコちゃんベルト」取扱店では、適切な骨盤ベルトの着用指導が行われており、自分でできる骨盤ケアの重要性が広まっています。このように、骨盤の歪みが35歳産後の痩せにくい原因の一つであり、健康的に痩せるためには、この土台を整えることが不可欠なのです。
4. 育児による生活習慣の変化
育児中の生活は、どうしても自分のペースで進められないもの。これも痩せにくいさに繋がります。
睡眠不足とストレス
慢性的な睡眠不足や、育児のプレッシャーによるストレスは、ホルモンバランスや自律神経を乱します。これが食欲をコントロールするホルモンに影響を与え、過食や間食に繋がりやすくなります。
特にストレスホルモン「コルチゾール」の過剰分泌は、食欲を増進させ、特に甘いものや脂っこいものを欲しやすくし、お腹周りに脂肪を蓄積させると言われています。
育児で多忙な日本のお母さんたちは、睡眠時間が十分に取れない傾向にあり、これが35歳産後の女性が痩せにくい大きな原因となっています。
運動不足
赤ちゃんのお世話が最優先されるため、自分の運動時間を確保することは非常に困難です。まとまった運動ができないことで筋肉量は減り、基礎代謝がさらに低下する悪循環に陥ることがあります。
特に腹筋や骨盤底筋群などのインナーマッスルの低下は、姿勢の悪化にも繋がりかねません。日本の育児支援施設では、親子で参加できる体操教室などが増えていますが、それでも定期的な運動習慣を確立するのは簡単なことではありません。
食生活の乱れ
授乳中の空腹感からつい食べすぎてしまったり、育児の忙しさから手軽な食事に偏り、栄養バランスが崩れたりすることも少なくありません。
また、子どもの食べ残しを「もったいない」と食べてしまうことも、積み重なると摂取カロリーオーバーの原因になります。コンビニエンスストアの利用が増えたり、簡単な丼ものや麺類で済ませてしまったりと、栄養が偏りがちな日本の産後ママの食生活も、35歳産後の痩せにくい状況を助長していると言えます。
産後35歳からでも「健康的に痩せる」ための具体的なステップ

「じゃあ、どうしたら痩せられるの?」という疑問に答えるために、無理なく健康的に痩せるための具体的な方法をご紹介します。焦らず、ご自身のペースでできることから始めていきましょう。
ステップ1:ダイエット開始のタイミングを見極める
35歳産後の健康的に痩せるための第一歩は、焦らず、自身の体の状態を理解し、適切なタイミングでダイエットを開始することです。
産褥期は体の回復を最優先に
出産直後の「産褥期」(一般的に産後6~8週間)は、子宮が元の大きさに戻る期間であり、悪露の排出や傷の回復など、体が大きく変化し回復に専念すべき非常にデリケートな時期です。
この時期に無理な運動や食事制限を行うと、回復が遅れたり、体調を崩したりするリスクがあるため、絶対に避けましょう。日本の産科医会も、この期間は安静を推奨しています。
「ボディリターン期」がチャンス
産後2~3ヶ月頃からは「ボディリターン期」と呼ばれ、妊娠中に増加した水分や脂肪が自然と落ちやすい時期とされています。これは、ホルモンバランスが徐々に正常に戻り始めるためで、この頃から、かかりつけの産婦人科医と相談しながら、軽いウォーキングや産褥体操など、体に負担の少ない範囲で健康的に痩せるための準備を始めるのが効果的です。
特に、帝王切開で出産された場合は、腹部の傷口の回復を優先とし、必ず医師の許可を得てから3~4ヶ月経過してからダイエットを開始するようにしてください。東京都が推進する産後ケア事業のように、多くの自治体で産後ママの心身の回復をサポートするプログラムが提供されており、これらを活用することも賢明な選択です。
ステップ2:食べるものを見直す「食事改善」
授乳中の場合は特に、赤ちゃんへの栄養供給も考慮し、無理な食事制限は禁物です。
栄養バランスの取れた食事
極端なカロリー制限ではなく、体の回復や授乳に必要な栄養をしっかり摂ることが大切です。高タンパク質・低脂質を意識し、和食中心のメニューがおすすめです。
鶏むね肉、魚、大豆製品、卵などでタンパク質をしっかり摂り、ごはん、パン、麺類などの糖質は、雑穀米やさつまいもなどの良質な炭水化物を選びましょう。食物繊維が豊富な野菜や海藻類も積極的に取り入れてください。日本の伝統的な「一汁三菜」は、理想的な栄養バランスの食事として知られています。
食べすぎに注意し、間食も賢く
授乳中であっても、摂取カロリーが消費カロリーを上回れば体重は減りません。空腹を感じやすいときは、ナッツ、ヨーグルト、果物など、栄養価が高く腹持ちの良いものを少量摂るようにしましょう。
血糖値の急上昇を抑えるために、夜の炭水化物を控えめにするのも効果的です。例えば、夕食のご飯を軽くする、夜遅い時間のラーメンを避けるといった工夫が有効です。
十分な水分補給
1日に2リットル以上の水を意識して摂りましょう。代謝アップや便秘解消にも繋がります。無糖の飲み物を選ぶのがポイントです。日本の多くの自治体では、熱中症対策としても水分補給の重要性を啓発しており、特に35歳産後の女性には不可欠な習慣です。
ステップ3:無理なく続ける「運動と骨盤ケア」
育児で忙しい中でも、隙間時間を活用して体を動かす習慣をつけ、健康的に痩せる土台を作りましょう。
産褥体操からスタート
まずは、体に負担の少ない産褥体操から始め、徐々に運動習慣を身につけていきましょう。日本の多くの産院で指導される「骨盤底筋体操」などは、産後すぐに始められる運動の代表例です。
骨盤ケアで土台を整える
骨盤ベルトを適切に使用したり、産後向けの骨盤体操を取り入れたりして、骨盤を正しい位置に戻すことを意識しましょう。これにより、姿勢の改善、代謝アップ、内臓機能の正常化が期待できます。日本の各地には産後ケア専門の施設があり、専門家による骨盤ケア指導を受けることも可能です。
育児と両立できる運動
ウォーキング
ベビーカーを押しながらのウォーキングは、良い気分転換にもなります。例えば、公園やショッピングモールなど、お子さんと一緒に楽しめる場所を選んで、景色を楽しみながら歩くのがおすすめです。
抱っこしながらスクワット
赤ちゃんを抱っこしながらゆっくりスクワットをするなど、育児の合間にできる運動を取り入れてみましょう。子どもの体重を利用することで、負荷をかけながら安全に運動できます。
体幹エクササイズ
ドローイン(お腹をへこませたままキープする呼吸法)や、プランク(うつ伏せで体を一直線に保つ体幹トレーニング)など、自宅で短時間でできるトレーニングも効果的です。これらは日本のフィットネス動画サイトなどでも多数紹介されており、手軽に始められます。
骨盤底筋トレーニング
出産でダメージを受けた骨盤底筋群を鍛えることは、尿漏れ予防だけでなく、お腹周りの引き締めにも繋がります。
無理のない目標設定
焦りは禁物です。例えば、「1ヶ月に1kg減らす」といった、無理のない目標を設定し、半年から一年かけてゆっくりと体重を落としていくことを目指しましょう。日本の健康指導でも、急激な減量ではなく、持続可能なライフスタイルの改善が推奨されています。継続できる習慣を身につけることが何よりも大切です。
ステップ4:心と体を休める「生活習慣の改善」
ダイエットは、食事や運動だけではありません。心身の健康が土台となります。
質の良い睡眠の確保
育児中は難しいですが、可能な限り睡眠時間を確保し、質の良い睡眠を心がけましょう。短時間でも深い睡眠をとる工夫(寝室の環境を整える、寝る前にリラックスする時間を作るなど)が有効です。
睡眠不足はホルモンバランスを乱し、食欲増進や代謝低下の大きな原因となります。日本の睡眠学会では、質の高い睡眠が心身の健康に不可欠であることを強調しています。
ストレスケア
ストレスは食欲を増進させるだけでなく、体の不調にも繋がります。アロマテラピー、入浴、軽いストレッチ、好きな音楽を聴くなど、自分に合った方法でリラックスできる時間を作り、ストレスをためないようにしましょう。日本の温泉文化や森林セラピーなども、ストレス軽減に有効な手段として注目されています。
鉄分補給の意識
ホルモン変化期には鉄分が不足しやすくなります。
鉄分不足は、疲労感、代謝低下、むくみなどの原因になることがあります。赤身肉、魚、ほうれん草、ひじきなどから意識的に鉄分を摂りましょう。特に日本人女性は鉄分不足に陥りやすい傾向にあるため、サプリメントの活用も視野に入れると良いでしょう。
一人で悩まないで!専門家への相談も有効
35歳産後で痩せにくいと感じ、加えて「疲れやすい」「むくみやすい」「体が冷える」「肌が乾燥する」といった症状が続く場合は、単なる産後の不調だけでなく、甲状腺機能低下症などの病気が隠れている可能性も考慮に入れる必要があります。
甲状腺ホルモンは全身の代謝を司る重要なホルモンであり、その分泌が低下すると、基礎代謝が落ち、体重増加や疲労感、便秘などの症状が現れることがあります。日本では、女性に比較的多く見られる病気であり、産後に発症することもあります。まずはかかりつけの産婦人科医や内分泌科医に相談し、適切な検査を受けることが重要ですし、必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらいましょう。
また、「何をしても痩せにくい」「食事管理や運動が続かない」と一人で抱え込まず、専門家のサポートを積極的に活用することも、健康的に痩せるための有効な手段です。例えば、地域の保健センターでは管理栄養士による食事指導が受けられますし、NPO法人日本マタニティフィットネス協会認定の指導員がいるスタジオでは、産後の体に特化した安全な運動指導を受けることができます。
最近では、オンラインでAIを活用した食事管理アプリや、医師の管理下でGLP-1受容体作動薬を使用する「医療ダイエット」も注目されていますが、これらは必ず医師と十分に相談し、個々の体質や状況に合わせて慎重に検討することが大切です。家族や周囲の協力を得ながら、自分に合ったサポートを見つけることが、35歳産後の健康的に痩せる道を開くでしょう。
まとめ
35歳産後で痩せにくいと感じるのは、あなたの努力不足ではありません。ホルモンバランスの変化、基礎代謝の低下、骨盤の歪み、そして育児による生活習慣の変化など、多くの要因が複雑に絡み合って生じる自然な体の反応です。
大切なのは、焦らず、ご自身の心と体の回復を最優先に考え、無理のない範囲で継続できる方法を見つけることです。
栄養バランスの取れた食事、適度な運動と骨盤ケア、そして質の良い睡眠とストレスケアを日々の生活に取り入れ、もし必要であれば専門家のサポートも活用しながら、健康的に痩せるための体と心を取り戻していきましょう。
あなたのペースで、一歩ずつ前に進んでいくことが、理想の自分に繋がる一番の近道です。
